秘密



 

作品の概要

 

 

秘密

 

1998年9月 初刊行(文藝春秋)
2001年5月 文庫化(文春文庫)

 

杉田平介の妻・直子と娘・藻奈美はバスでスキー場へ向かっていたが、
運転手の不注意で崖から転落してしまう。

直子と藻奈美は病院に運ばれるが、直子は帰らぬ人となってしまう。
悲しみにくれる中、藻奈美は奇跡的に意識を取り戻すが、
まるでそれは直子であるかのような話しぶりであった。
藻奈美の体に、直子の魂が宿っていたのだ。

体は娘・藻奈美でありながら、魂は妻・直子という状況で、
平介との奇妙な「秘密の」生活が始まる。

そしてある日、藻奈美の意識が突然戻り・・・。
親子と夫婦の間で苦悩する平介の心情を見事に綴った感動の名作。

補足情報

第52回日本推理作家協会賞受賞
第120回直木賞候補作
1998年9月 初刊行(文藝春秋)
2001年5月 文庫化(文春文庫)
1999年 広末涼子・小林薫主演で映画化
2010年 志田未来・佐々木蔵之介主演でドラマ化

登場人物

杉田平介
直子の夫で、藻奈美の父親。突然の事故で妻を亡くすが、娘・藻奈美に直子の魂が宿り、
「秘密」の生活が始まる。親子であり、夫婦でもあるという境遇に苦悩する。

杉田直子
平介の妻。バスの転落事故によって死亡するが、自分の魂が藻奈美に宿る。
当初は藻奈美の体を使って生きていくことに戸惑うが、「藻奈美」として生きていくことを決意する。

杉田藻奈美
平介と直子の娘。バス事故では直子が自分を犠牲にして守ったおかげで外傷はほとんどなかったが、
魂は直子のものになってしまう。

橋本多恵子
藻奈美の小学校の担任教師。平介と藻奈美を気にかけている。

相馬春樹
藻奈美(彼女に宿った直子)の高校時代の先輩。藻奈美に恋心を寄せている。
彼の存在を知り、平介が平常心を無くし、藻奈美との関係がギクシャクする。

梶川幸広
スキーバス事故を起こしたバスの運転手。事故の原因が過剰な勤務にあったことが判明する。

根岸文也
幸広の息子。自分のことを捨てたとして幸広を憎んでいる。

感想

本作を読み始めた当初は、母親と魂が入れ替わった娘・藻奈美との生活は、
コミカルな感じを受け、面白く読むことが出来ていました。

しかし、物語が進んでいくにつれ、
平介の葛藤や苦悩が手に取るように伝わってくるのです。

平介にとっては当初、目の前にいるのは娘の藻奈美ではなく、
妻の直子そのものだったのでしょうね。
見た目はもちろん藻奈美でしたが。

ところが、藻奈美の体に宿ってしまった「直子」は
「藻奈美としての生活」があります。

体は完全に藻奈美なわけですから、学校へも行かなければなりません。
一緒に勉強やスポーツをする仲間がいるのです。

やがて、藻奈美に恋心を抱く男性の存在が明らかになります。
もちろん、「藻奈美」は平介の「娘」なのですから、
恋愛をし、恋人ができるのも自然な流れなのです。

でもやっぱり平介は納得がいかないわけです。
その時の平介の心情が実に見事に描かれており、
思いっきり感情移入してしまいます。

平介は藻奈美を想うあまり、人として許されない行き過ぎた行動をも取るようになります。
普通に考えたら「なんでそこまでするの?」と思うかもしれません。
でも、中身は「妻」なのですから、当然の行動なのかもしれません。

僕が平介の立場になったら、どうしてたでしょうか。
その答えは、実際にその立場になってみないとわかりませんが、
やはり、平介同様、多少行き過ぎた行動にも出てしまうでしょう。

そして、なんとも言えない切なくて悲しいラスト。
最後の最後で、「え!?まさか、そんな・・・!?」
と、思わず口にしてしまうような、思ってもみない結末が待っています。

何度読んでも、泣かされる作品です。

おすすめ度:★★★★★★★★★☆



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2011年2月16日 | コメント/トラックバック(8)|

カテゴリー:本の感想

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コメント

  1. momo より:

     東野作品の中では、これが一番好きです。

     大林監督の映画「転校生」も素敵な作品でしたが、それと同様に妻と娘が入れ替 わる設定は、現実ありえないのだけれど凄い力で引き込まれ、日々の生活と心理 描写が「お見事!」の珠玉の一品です。

     私の中では、映画の小林薫さんとドラマの志田未来さんがクロスして再現されて しまいます。

    • RYOJI より:

      momoさん
      いつもコメントありがとうございます。
      ありえない設定なんだけれど、初めて読んだときの衝撃は今でもよく覚えています。
      読んでしばらくは余韻が抜けなかったですね。
      ドラマは忠実に再現されていて、とてもよい仕上がりだったと思います。

  2. キリン より:

    タイ人のキリンです。

    昨日、会社の休みの日なので、早速買っておいた「秘密」のドラマを見ました!
    最初は少しずつ見ようと思ってたんですけど、結局第一話から最後の第九話まで見てしまいました!!すごく感動が残ってて、涙が出るほどだったです。
    小説の方は読み終わっていないもので、全然結末分からず、最後まで主人公と話に入っていた感じです。

    最後の結末には、ひっかかったんです。まさかモナミは…なんて!
    すごいです。東野圭吾さんはとてもすごいです。
    真ん中のところはちょっとつまらないと感じてしまったんですけど、最後はやっぱりそんな言葉を取り消さなきゃ!

    タイでは、東野圭吾さんのドラマ化や映画化の作品を見ることが中々難しいもので、一つでも見逃してしまったら、後悔するでしょうね。

    • RYOJI より:

      キリンさん
      コメントありがとうございます。
      「秘密」は機会があれば是非原作をお読みください。
      読んでしばらくは余韻が抜けませんでした・・・。

  3. なかのたけし より:

    こんな切ない話があっていいのかと涙が止まりませんでした。
    涙もろいのではなく、実に10年ぶりに流した涙でした。
    読み終えた後、妻を大事にしようと思いました。

    • RYOJI より:

      なかのさん
      コメントありがとうございます。
      本当に切なくて、さらにラストで
      一気に泣かされたことを覚えています。
      もし自分の立場なら?と考えると、とても耐えられそうにありません・・・。

  4. 東洋 より:

    実は小説はまだ読んでいないんです。
    ドラマを先に見てしまって、原作を敬遠している状態です。
    ドラマはジワジワ高揚した記憶があります。
    しかし、原作には勝てないだろうなって思います。
    そうなると・・・原作読むべし!となりますね。
    期待して読んでみたいと思います。

    • RYOJI より:

      東洋さん
      コメントありがとうございます。
      やっぱり原作ありきだと僕は思っています。ただ、ドラマはかなり原作に忠実だったと思うので、とてもよかったと思いますよ。
      (少なくとも映画よりは…)原作も是非読んでみてください。


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