パラドックス13



 

作品の概要

4620107395 パラドックス13
東野 圭吾
毎日新聞社 2009-04-15 

by G-Tools

3月13日13時13分13秒、ブラックホールの影響で「P-13」という現象が発生することが学者らの研究で明らかになった。しかしそれは具体的にどのような事態を起こすのかまったく詳細が不明なため、一部の政府関係者にしか知らされていなかった。

一方そのころ、警視庁捜査一課の管理官である久我誠哉は強盗犯の確保に取り掛かっていた。
慎重に作戦を進めるが、誠哉の弟で所轄署の刑事・久我冬樹の無謀な行動により、誠哉は犯人に撃たれてしまう。そして冬樹もまた犯人が乗った車にしがみついているところに銃弾を受けてしまう。

激しい衝撃を受けた後、意識を取り戻した冬樹が見たのは、誰もいなくなった東京の街だった。人が突然消えてしまったのだ。
冬樹は街を彷徨い、生き残った仲間を見つけ、やがて死んだはずの誠哉とも再会する。
廃墟と化した東京を彷徨い続ける彼らに地震や台風、大雨、津波などが襲いかかる。

残された彼らの運命は―。

補足情報

2009年・毎日新聞社より刊行

主な登場人物

久我 冬樹
所轄の刑事。兄・誠哉と共にある強盗事件を追いかけるが、暴走してしまい…。
久我 誠哉
冬樹の異母兄。警視庁捜査一課・管理官。常に冷静沈着で優れた判断力・行動力を持つ。P-13現象後の世界では強力なリーダーシップを発揮する。

白木 栄美子
ミオの母親。P-13後の世界では勇人の面倒を見たり食事を作ったりと、メンバーの母親的な存在になる。明日香からはママと呼ばれる。
白木 ミオ
栄美子の娘。あることが原因でショックで言葉が話せなくなる。冬樹が最初に出会った人物。

中原 明日香
女子高生。とても明るく前向きな性格の持ち主。冬樹に好意を寄せる。
富田 菜々美
看護師。病人を看病するなど頼もしい存在だが、P-13後の世界に絶望し生きる気力を失う。
新藤 太一
太った大食いの青年。ムードメーカーだが、信頼を揺るがす「ある問題」を起こしてしまう。

戸田 正勝
建設会社の専務。会社での地位にこだわり続ける。建築士の資格をもつ。
小峰 義之
建設会社勤務の技術者で戸田の部下。小峰の行動が、避けては通れない「ある問題」を露呈してしまう。

山西 繁雄:老人。人生経験豊富な彼の話す一言は皆を勇気づけていく。
山西 春子:繁雄の妻。

勇人:アパートに取り残されていた赤ん坊。
河瀬:ヤクザの男。インフルエンザに感染する。

感想

本作は今までの東野作品にはない全くの新境地という感じがしました。

「P-13」という不可解な超常現象が起き、わずか数名を残して人々が消えてしまいます。
残された主人公たちは懸命に生きようと必死になります。

本作が面白いなと感じたのは、登場人物のそれぞれの個性がとても出ている点にもあると思いました。

元気で明るい女子高生の明日香、皆のお母さん的存在の栄美子。
看護師の菜々美は頼りになる存在だが、あることが原因で生きる気力を無くしてしまったり。
食べることに命をかける太一や、建築の知識が豊富な戸田&小峰。
意外と頼りになるヤクザの河瀬。

そして、経験豊富な山西のおじいさん。
彼の言葉には重みと説得力があり、とても大きな存在感でした。

そんな彼らがリーダー格である久我誠哉と弟・冬樹と共に
P-13現象という謎の超常現象に見舞われ、さまざまな天変地異で廃墟と化した東京を彷徨い歩きます。
描写力は秀逸で、僕は東京のことは全然分からないんですが、それでも目の前に悲惨な情景が次々と浮かんできました。

「この先どうなるんだろう」「どういう結末を迎えるんだろう」と
ページをめくる手が止まらないほど、夢中になってしまいました。

中でも、リーダーの役割を背負った久我誠哉という人物がすごさが際立ちます。
元は警視庁捜査一課の管理官で、行動力、判断力、リーダーシップ、そして思想。
どれをとってもこれほど強い人間がいるのかと感心させられます。

でもそんな中で物語の終盤になってくると、避けては通れない「ある問題」が露呈します。
そこで誠哉が自分の考えを提案するんですが、これにはちょっと「行き過ぎ」だと感じざるを得ませんでした。
読まれた方はご存じ、「アダムとイブ」論です。

「この世界でこのメンバーで生き抜いていかなければならない」
という誠哉の強い想いはわかります。
でも、皆が皆、誠哉のように強くはないし、この絶望的な極限状態の中で将来のことまで考えられないのは当然だと思います。
話が極論すぎて、受け入れろと言う方が無理というものです。

冬樹が言った「まだそんな段階じゃない」というのがよくわかりました。
この辺の誠哉の考えと他のメンバーの隔たりがとても残念に思いました。
今ここでその提案が必要だったのか?とちょっと疑問でした。

そして、意外なラスト。
ラストに関しては、ちょっと残念というか悲しくて寂しい気持ちになりました。

あまり書くとネタバレになってしまうので難しいのですが、
もうちょっとさわやかで「幸せな」ラストを用意してくれてもよかったんじゃないかな、とも思いました。

僕としてはその辺りがちょっとマイナスポイントかと。

映像化してみても面白いかもしれませんね。難しいかもしれませんけどね。

おすすめ度:★★★★★★☆☆☆☆



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2011年7月29日 | コメント/トラックバック(14)|

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コメント

  1. ふらっと より:

    こんな極限状態でのリーダー役は難しいですね。

    そして、「パニックに陥らないようにほんとうのことは知らせない」という姿勢は
    現在の日本のことを思うと、物語の中のこととして他人事ではいられないような気がします。

    • RYOJI より:

      ふらっとさん
      コメントありがとうございます。
      こういう状態で真のリーダーシップを発揮できる人って本当に素晴らしいと思います。
      そして今の日本にはなかなかいないんじゃないでしょうかね。

  2. 東上かおる より:

    パラドックス13もまだ読んだことないですね。

    いつもRYOJIさんに先越されます(汗)

    お母さんが知り合いから、赤川次郎さんの文庫本を多数持ってきたり、さっき乙一さんのデビュー作を買ってきたり、私の周りには本が溢れています\^o^/

    たくさん読むぞ〜!
    おー!!

    • RYOJI より:

      かおるさん
      コメントありがとうございます。
      自分も読みたい本が溜まってます^^
      まずは東野さん読破まであと少しなので最優先で読んでいます。
      それにしても本作はあっという間に読めてしまいました。
      面白かったですよ!

  3. 苗坊 より:

    こんばんは^^
    怒涛の展開で、どうなるんだろうとひやひやしながら読みました。
    展開はとても面白かったのですが、どうも私にはなじまなかったです。
    決定打になったのはやはり「アダムとイブ」論ですかね。
    そう思っていたとしても、冬樹の言うように「まだそんな段階ではない」と思うんです。
    どうしてそこでそれをいう?と思わずにはいられませんでした。
    ラストは前向きさもありましたけど、やっぱり切なかったですね。

    • RYOJI より:

      苗坊さん
      コメントありがとうございます。
      確かに展開は面白くてハラハラ感がありましたが、
      それだけに「アダムとイブ」論はちょっと残念でしたね。
      誠哉という人間はちょっと完璧すぎでしたね。

  4. washidora より:

    書評面白かったです。
    生物研究系の仕事なんですが
    アダムとイブ論はまあそれしかないわなという結論です。
    私も読んでいる途中で「もし異常気象が収まって新しい世界をつくるとして、日本に11人しかいないとすると、どうすれば生き残れるか?」を勝手に考えて
    まったく同じ結論を出していました(笑)。(もっともそれでも血が濃すぎるので、そうやって凌いでいるうちに、海外の生き残りを見つける必要はありますが。)
    理系出身の東野圭吾さんだけあってよく考えられているなと思いましたよ。

    • RYOJI より:

      washidoraさん
      コメントありがとうございます。
      アダムとイブ論は確かに正しい考えだとは思います。それを堂々と主張できる誠哉も素晴らしいです。
      でもあの極限状態で、しかも誠哉ほど強くない人間がそれを聞いても、到底受け入れられないですし、正しいと分かってはいても、あの状態でそれを主張するのを良しとするのかどうか、そこが難しい部分だと感じました。
      なんとももどかしい思いでした。
      東野さんの発するメッセージは相変わらず強烈です。


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