手紙



 

作品の概要

 

 

手紙

 

2003年3月 初刊行(毎日新聞社)
2006年10月 文庫化(文春文庫)

 

武島直貴の兄・剛志は、弟想いで優しく、直貴の事を常に第一に考えていた。
直貴の大学進学を切望していたが、両親は既に亡くなっており、
自らも体調を崩してしまう。
そんなどん底の中、どうにか学費を捻出しようとして、ついに犯罪に手を染めてしまう。

弟・直貴は進学や夢、恋愛、仕事など何をするにも「強盗殺人犯の弟」という
厳しい現実が付きまとい、その度に挫折する。

服役中の兄からは毎月手紙が届くが、
直貴は自分の人生をめちゃくちゃにした
兄の存在を疎ましく思うようになる。

「犯罪者の弟」という過酷な運命を背負い、
差別と戦い続ける事を余儀なくされた男の
あまりにも壮絶な人生を描き切った話題作。

補足情報

第129回直木賞候補作。
2003年3月 初刊行(毎日新聞社)
2006年10月 文庫化(文春文庫)
2006年 山田孝之、沢尻エリカ主演で映画化 ⇒ 映画「手紙」のレビューはこちら

登場人物

武島直貴・・・主人公。兄である剛志が強盗殺人の罪を犯す。事件発生当時は高校生
武島剛志・・・直貴の兄。強盗殺人事件を起こして刑務所に入る。弟を心配し、毎月手紙を送るが・・・
緒方敏江・・・剛志が殺害した資産家の老女
白石由実子・・・東西自動車の従業員。直貴のことを何かと気にかける。
寺尾裕輔・・・直貴のバンド仲間で、通信大学の同級生。直貴が唯一心を開ける存在
中条朝美・・・資産家の娘。直貴と恋人関係になるが・・・。
嘉島孝文・・・朝美の従兄。朝美の事を想う。直貴の周辺をいろいろ調べる。
平野・・・新星電機の社長。直貴を見守る。
緒方忠夫・・・殺害された緒方敏江の息子。
武島実紀・・・直貴の長女

感想

あなたは自分の娘の結婚相手が「強盗殺人犯の弟」
と知ったらどうしますか?
心から自分の娘の結婚を祝福できますか?

作中には
「差別は当然、犯罪者やそれに近い人間を排除しようとするのは当然の行為だ」
というようなセリフが出てきます。

私も同じような境遇に置かれれば、当然排除してしまうでしょう。
それが当たり前だと思っているからです。

でもこの作品を読んだ時のなんとも言えない感情。
当たり前だと思っていたのに、直貴に感情移入してしまい、
どうしようもなく悲しい気持ちになりました。

自分は何も悪いことをしていないのに、
なぜ、社会は自分を排除しようとするのか?
主人公・直貴の苦悩は計り知れません。

強盗殺人は確かに重罪です。
被害者の家族からすれば、憎むべき犯罪で、その家族も同罪だといわれても
仕方ないのかもしれません。
犯人やその家族に同情する者など一人もいなくて当然です。

ただ、この作品に限って言えば、強盗殺人を犯した兄も
実は「弟想いのとても優しい兄」なのです。
自分のことよりも、第一に弟の幸せを考えてしまうような兄なのです。

その兄が弟のために、犯罪を犯してしまうのです。
こんな悲しいことってあるでしょうか。

「手紙」というタイトルには、
弟を想う兄からの手紙、という意味があります。
毎月毎月欠かさず兄から手紙が届きます。

手紙を受け取った弟は、兄のせいで自分の人生がめちゃくちゃになったことに対し、
怒りのぶつけようがなく、葛藤し、悩みます。

そして、弟・直貴は誰もが予想できなかった結論出します。
そうせざるを得ないのか・・・、という気持ちと、
他にいい方法はないの?っていう感情が交差します。

そして、終盤でもうひとつの「手紙」の存在が明らかになります。
この手紙の存在を知ったときの衝撃は計り知れないものがありました。
今まで溜まっていたものが溢れるように涙が止まりませんでした。

この作品は確かに泣けます。
僕はおすすめしますが、賛否ある作品かもしれません。
でも絶対に読んでいただきたい作品であることは間違いありません。

おすすめ度:★★★★★★★★★☆



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2011年2月14日 | コメント/トラックバック(11)|

カテゴリー:本の感想

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  1. 本の推薦堂 より:

    手紙(東野圭吾)

    手紙 (文春文庫) 流行作家、”東野圭吾”の作品で初めて読んだのが、この「手紙」であった。ちょうど”容疑者Xの献身”で名前を知った頃だろうか、読んでみたいと思い何気なく手にと…

コメント

  1. あやの より:

    初めまして。
    私は三重県の高校二年生です。

    手紙で読書感想文を書いていて
    いろいろ調べていたらこのブログにたどり着きました。

    そこであなたの感想を読んで
    このような考えもあるのだ、と思いました。

    参考になりましたので
    コメントさせていただきます。

    またブログ見に来ます。

    • RYOJI より:

      あやのさん
      はじめまして。コメントありがとうございます。
      「手紙」は感想を書くのが最も難しかった作品の一つです。
      僕はいまだにこれを読むと泣けますが、読む側の立場や境遇によっても
      受け入れ方が最も異なる作品ではないでしょうか。

      高校生さんですか。読書感想文で「手紙」を選ばれるとは、素晴らしいですね。
      僕が高校生の時は読書そのものが嫌いでしたから、
      作品の素晴らしさなどは到底わかっていなくて、嫌々読んだのを覚えています。
      そう思うとなんだか羨ましい気がします^^

  2. あやの より:

    お返事ありがとうございます ^^

    私は小さいころから読書が好きで
    初めて東野圭吾さんの作品を読んだのは
    小学6年生の時です!
    確か 「さまよう刃」だったと思います。

    その時は単純に分厚い本を
    読むことに憧れてただけんですけどね。

    手紙は最近DVDを見て作品を思い出し
    読書感想文を書こうと思いました。

    高校生の読書感想文はインパクトが
    必要だと思うので ^^

    今は題名つけに悩んでます(笑)

    • RYOJI より:

      あやのさん
      コメントありがとうございます。
      小学生の頃から東野作品を読まれてるんですね!素晴らしいです。
      初めてが「さまよう刃」だと、かなり衝撃だったでしょうね・・・。
      僕ももっと若い頃から読書をしていればと後悔することがあります。
      これからもどんどん読んでいってくださいね。
      読書感想文、頑張ってください!

  3. あやの より:

      衝撃でしたね !
      なので あの作品は一生
      忘れないと思います。

      読書感想文 終わりました ^^

      最後は、罪を償うということは
      生きていくこと、という感じで終わりました!!

    • RYOJI より:

      あやのさん
      コメントありがとうございます。
      感想文、書けましたか^^
      テーマがとても重いので、読んだ人によって考えも変わってくるでしょうね。
      「考えさせられる」という意味でも、教材としてはいいテーマかもしれませんね。
      あやのさんの感想文を読んだ人が一人でも多く、この作品を読んでくれるといいですね。
      是非、周りのご友人にも勧めてみてください。

  4. キリン より:

    タイ人のキリンです。

    この「手紙」は映画も本も読みました。
    兄弟の愛ってこんなに大きい?!!ってうところ感動しました。
    私一人っ子なので、中々兄弟の気持ちが分からないとずっと思ってました。
    だが、この小説を読んで、本当本当に実感した気がする。

    一つタイと日本は異なってるのは、犯罪を起こした人の家族がその罪も影響が及ぶことです。タイでは、犯罪者本人だけは冷たい世間の目が攻められるんです。でも、日本では家族まで攻められるなんて、私では理解できません。たとえ直接やられるわけじゃなくても、どうぜ生活が送りにくいでしょう。このポイントを使って小説になり、日本の社会を揺らせるぐらいじゃないかなと私は思います。

    • RYOJI より:

      キリンさん
      コメントありがとうございます。
      兄の弟に対する想いがとても伝わってくる作品ですね。
      それだけになんとも悲しく切ない作品だと思います。
      日本ではどうしても犯罪者やその家族は遠ざけたいという想いがあります。
      私ももし自分の娘の結婚相手が犯罪者の家族なら、反対するだろう、と思います。
      考えさせられる作品なのですが、読了しても見つからないですね。
      作者である東野さん自身もそういっておられます。

  5. momo より:

     感動しました。
     最初は、重いテーマなので頁をめくる指も遅々として進まなかったけれど
     第ニ章から目が釘づけです。

     何よりも由美子の人格の素晴らしさに惹きつけられ
     同時に主人公・武島直貴の差別や偏見に喘ぎながらも
     心が崩壊しなかった芯の強さに感服しました。

     「チャラ男かな?」って印象だった寺尾裕輔の篤い友情と人情。
     「人間は信じられるんだ」と感じさせてくれます。
     そして、兄・剛志の不器用で深い弟への愛、滂沱の涙でした。

     他の東野作品のなかで淡々と遂行される殺人事件、
     当然ながらその加害者のその後は描かれないけれど
     被害者への鎮魂歌であり、犯罪抑止力をも担っているかもと思わせる
     力作でした。

     私の中では、この作品が「秘密」を越えてトップを獲得です。
     

    • RYOJI より:

      momoさん
      コメントありがとうございます。
      僕も手紙は感動してラストは号泣でした。
      直貴がどんな想いであの「答え」を出したのかと思うと、
      あまりに切なくて涙があふれます。
      映画も良かったですよー。


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