天空の蜂



 

作品の概要

 

 

天空の蜂

 

1995年11月 初刊行(講談社)
1998年11月13日 文庫化(講談社文庫)

 

錦重工業が防衛庁に納入するために開発した大型ヘリコプター・通称「ビッグB」がテスト飛行を目前にして何者かに強奪された。
しかもビッグBの機内には開発者の一人である山下の息子、恵太が乗っていたのだ。
恵太を乗せたまま、遠隔操作によりビッグBは飛び立ってしまう。

ビッグBが恵太を乗せたまま向かった先は福井県敦賀市にある原子力発電所だった。
そして、高速増殖原型炉『新陽』の上空でホバリングをはじめる。

そんな中、強奪した犯人から脅迫状が届く。
その内容は、
「現在、日本で稼動・点検中の原発を全て使用不能にしろ。さもなくばヘリコプターを落とす」
というものだった。

燃料切れによる墜落の可能性もある中で、迅速な対応が求められる。

恵太を無事に救い出し、ビッグBの墜落を回避し、原発周辺の安全を確保しなければならない。
しかし、日本中の原発を使用不能にすることもできない。
いくつもの難題を抱える中、政府が下した決断とは?

全国民に原子力発電所の在り方を強烈に問いかける、
社会派傑作ミステリー。

補足情報

第17回吉川英治文学新人賞候補作
1995年11月 初刊行(講談社)
1998年11月13日 文庫化(講談社文庫)

登場人物

湯原一彰:錦重工業航空機事業部本部勤務。「ビッグB」の開発に携わる。
山下:湯原一彰の部下。湯原と共に「ビッグB」の開発メンバー
山下恵太:山下の息子。遊びで「ビッグB」に乗り込んでしまい、その後ビッグBが奪われる。
笠松:錦重工業航空機事業部本部。湯原の上司。
三島幸一:錦重工業原子力機器事業部に勤務。
中塚一実:高速増殖原型炉「新陽」発電所所長。
小寺:高速増殖原型炉「新陽」発電所総合技術主任主任長。
室伏周吉:福井県警捜査一課の刑事。「新陽事件」を担当する。
関根:福井県警捜査一課勤務。室伏と共に行動する。
上条孝正:航空自衛隊救難員2等空曹。
雑賀勲:元自衛隊員。謎の男。

感想

本作ははかなり衝撃的な事件を取り扱っています。
原発の上にヘリコプターをホバリングさせて、墜落をさせるというのですから。
私は原発に比較的近い所に住んでいるので、人事ではありませんでした。
(ちなみに私の住んでいるすぐ近くの地名が登場しました。)

そして、墜落を防ぎたければ、全国の原発を使用不能にせよ、という
脅迫文が届きます。

しかも、これだけではなく、開発者の子供がヘリコプターに取り残されるという、
「予期せぬ出来事」もしっかり取り入れていて、
さらに読者を引き付けます。

このとてつもない緊迫感は、読み始めたら止まりません。

子供の救出に命がけで立ち向かう人々。
少ない手掛かりから犯人をじわじわ追い詰める刑事。
「限られた時間の中で」というのも本作の大きな魅力のひとつだと思います。

また単に緊迫感のある物語だけでなく、
本作が社会全体に訴えかけるメッセージも強烈なものがあります。

読み終わった後は、何とも言えない重い気持ちになりました。
考えさせられることは多いです。

ちなみに―。
本作は技術的・専門的な描写がかなり多く、とても詳細に、入念に書かれてあります。
そして、登場人物の多さが半端ではありません。それぞれの肩書きもとても覚えられません。
ここが本作をかなり難しく感じさせる部分かも知れません。
実際、私も最初はある程度「読み飛ばし」をしていました。

ただ、よく読んでみると、ここまでよく詳細に書けたなー、とつくづく感心してしまいます。
相当な専門的知識がないとここまでは書けないでしょう。
東野さんはこの作品のための取材や研究に足掛け3年を費やしたと言っておられます。
これは並大抵のことではありません。

最初は難しい専門的な部分は読み飛ばしても、十分に楽しめるので問題はないと思います。

でも、せっかくですから、2回目、3回目と読まれる機会がありましたら、
難しく感じてもじっくりと全てに目を通して読んでいただきたいと思います。
それだけ、作者の思い入れが詰まった作品ですから。

おすすめ度:★★★★★★★☆☆☆



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2011年3月4日 | コメント/トラックバック(2)|

カテゴリー:本の感想

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コメント

  1. basil より:

    これはまた面白そうですね。
    なんだか高村薫さんみたい。
    私の好きなジャンルです。
    どうしよう。読みたい本がどんどんたまって行く。
    困った~~w

    • RYOJI より:

      ほんとに、いろんなジャンルで面白い
      作品がたくさんあるので、
      どんだけ時間があっても足りないんです。
      僕もまだまだたくさん読みたい本がたまってます(^_^;)


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