美しき凶器



 

作品の概要

 

 

美しき凶器

 

1992年10月 初刊行(光文社 カッパ・ノベルス)
1997年3月 文庫化(光文社文庫)

 

安生拓馬、丹羽潤也、日浦有介、佐倉翔子の4人は、かつてアマチュアスポーツ界で
それぞれ華々しい活躍をした経歴を持っていた。

しかし、彼らは絶対に人には知られてはいけない暗い過去があった。


4人は、忌まわしき過去を知るただ一人の人物・仙堂之則が持つデータを抹消すべく、屋敷に忍び込むが、不測の事態に遭遇し、やむなく仙堂を殺害、屋敷に火を放ってしまう。

しかし、一部始終を仙堂の愛弟子である女性に見られていた。
仙堂から肉体改造を施され、超人的な肉体と能力を手に入れた彼女は復讐を決意し、
毒グモ(タランチュラ)のように4人に迫るが・・・。

補足情報

1992年10月 初刊行(光文社 カッパ・ノベルス)
1997年3月 文庫化(光文社文庫)

主な登場人物

日浦有介:元・陸上ハードル選手でスポーツライター。
佐倉翔子:元・体操選手でスポーツキャスター。
安生拓馬:元・重量挙げの選手。アスレチッククラブの取締役。
丹羽潤也:元・陸上短距離選手で桂化学工業陸上部のコーチ。

タランチュラ:カナダ人女性。仙道から肉体改造を施され、超人的な能力を持つ。
仙道之則:医師。スポーツ選手の肉体改造の研究に携わる。

小笠原彰:元・スキーの長距離選手。自殺する。
村山宏和:JOCの委員。ドーピングの調査をしている。
中斎教授:帝都大学の運動力学専門の教授。陸上部顧問。

日浦小夜子:日浦有介の妻。妊娠している。
中原友実子:桂化学工業陸上部所属の短距離の選手。丹羽の教え子。

鈴木三枝子:日浦有介の前のアパートの住人。タランチュラに襲われる。

吉村幸雄:派出所勤務の警察官。タランチュラの最初の犠牲者。拳銃を奪われる。

紫藤:山梨県警の刑事、巡査部長。事件の担当捜査官。
山科:山梨県警の刑事、警部。事件の担当捜査官。

感想

物語の大筋は「復讐」です。

大切な人を殺された女性が憎むべき犯人を捜し出し、次々と目的を果たしていくというもの。
わかりやすいと言えば、わかりやすいですね。

そして本作はその復讐劇の裏に、スポーツ選手ならではの闇の部分・ドーピング問題が絡んできます。
過去の栄光や現在の地位にこだわり、必死で隠そうとする元・有名スポーツ選手たち。
そんな彼らが保身のために今回の事件を引き起こします。
ラストではこれでもかというほど、栄光にしがみつく人間の嫌な部分を見せ付けられますね。

どうにもイマイチだなぁと感じた部分があって、
それは、本作の主人公で「復讐の鬼」と化した女性・タランチュラがかなり「異質」な点です。
スポーツ選手の肉体改造を研究している仙堂によって陸上競技の選手として育てられ、常人とは思えない筋肉、体格、運動能力を有しています。

このタランチュラなんですが、身体能力が高すぎて、
ここら辺が現実離れしすぎているなあという感じがありました。
あり得ない設定というやつですね。

そして、タランチュラに関しては、内面描写が一切ありません。
目的の人物の名前と住所だけで次々と殺人を犯していく、冷酷で残忍なサイボーグみたいで、かの有名な映画「ターミネーター」をちょっと思い出してしまいました。

とはいえ、タランチュラが徐々にとターゲットに近づいて追い込む様子や、
目的の人物と対峙する場面なんかは、
読んでいてとてもハラハラドキドキさせられましたし、
ページをめくる手が止まりませんでした。

タランチュラは、仙堂によってある特殊な肉体改造を施されています。
ある意味究極の肉体改造とも言えるのでしょうが、
正直、この肉体改造を知った時には背筋に寒気が走りました。

最後の最後でタランチュラがあるセリフを発します。
これまで一切内面を描いてこなかったタランチュラが最後に見せた
唯一の人間らしさ、女性らしさに胸が締め付けられる思いでした。
かなり切ないラストでしたね。

タランチュラは復讐のためとはいえ、残忍な殺人鬼になるのですが、
彼女もまた、悲しい運命を背負った被害者だったんですね。

ハラハラドキドキ感と、驚きのラストは読み応え十分でした。
是非、ご一読を。

おすすめ度:★★★★★★☆☆☆☆



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2011年5月31日 | コメント/トラックバック(1)|

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