容疑者Xの献身



 

作品の概要

 

容疑者Xの献身

2005年8月25日 初刊行(文藝春秋)
2008年8月 5日 文庫化(文春文庫)

 

天才物理学者の湯川と、天才数学者の石神。
彼らは大学時代の同期で、お互いを天才と認めたよきライバルだった。

そんな石神が密かに好意を寄せていたのが、
同じアパートの隣室に住む花岡靖子だった。

ある日、靖子はやむなく犯罪を犯してしまう。

ただならぬ雰囲気を察知した石神は靖子と娘の美里を守ることを決意し、
犯罪を隠蔽することを申し出る。

かつてライバルだった2人の天才の対決は
誰もが予想しえなかった結末を迎える。

補足情報

ガリレオシリーズ第3弾にして初の長編
第134回直木三十五賞受賞
第6回本格ミステリ大賞受賞
「本格ミステリベスト10 2006年版」 1位
「このミステリーがすごい!2006」 1位
「2005年「週刊文春」ミステリベスト10」1位
史上初の5冠達成
2005年8月25日 初刊行(文藝春秋)
2008年8月 5日 文庫化(文春文庫)
2009年 福山雅治、柴崎コウ主演で映画化(ガリレオ続編)
映画「容疑者Xの献身」のレビューはこちら

登場人物

湯川学
現帝都大学物理学准教授。通称「ガリレオ」。
警視庁捜査一課所属の草薙刑事に依頼され、捜査を手伝うようになる。
天才物理学者で、雑学知識もかなりのもの。スポーツも万能。

石神哲哉
本作の主人公の一人。
老け顔で髪の毛も薄いが、湯川・草薙とは帝都大学の同期。
大学時代は机に向かって問題を解いている様子から「ダルマの石神」と言われ、湯川が唯一「天才」と認める男。
数学者を志すが、家庭の事情により、断念し高校の数学教師をしている。
数学以外には一切興味がないが、同じアパートの隣に住む花岡靖子に恋心を抱くようになる。

草薙俊平
警視庁捜査一課所属、巡査部長。帝都大学社会学部出身で、湯川、石神とは同期である。
事件の聞き込みで靖子を訪ねた際、石神が帝都大学のOBと知り、湯川に相談に行く。
湯川を友人として信頼し、湯川が捜査をしやすいよう、いろいろ便宜を図る。

花岡靖子
娘の美里との2人暮らし。
赤坂でホステスをしていたが、転職し弁当屋「べんてん亭」の従業員になる。
元夫の富樫慎二に付きまとわれ、逃げるように住居を転々としている。
事件後、石神の助けにより窮地を脱するが、その後、石神の不可解な指図や自分への思いに戸惑うようになる。

花岡美里
花岡靖子の一人娘で中学生。バドミントン部に所属している。
助けてくれた石神を信頼し、言われる通りに行動する。
母親の花岡靖子と工藤が急接近するが、石神に対する申し訳なさを感じて、工藤を快く思っていない。

富樫慎二
靖子の二度目の夫。美里と血縁関係はない。
元々は真面目で紳士的であったが、会社の金を使い込んだことがばれ、その為解雇されてしまう。
その後の生活は荒れ、靖子とも別れる。
離婚後も靖子にしつこくつきまとい、金をせびったり娘の美里に対しても暴言を吐く。

工藤邦明
靖子の赤坂のホステス時代の常連客。
靖子に好意的で、富樫との離婚についても便宜を図る。
靖子が「べんてん亭」に勤めていることを知り、靖子に近づく。

感想

本作は「探偵ガリレオ」「予知夢」に続き、
天才物理学者・湯川准教授が登場するガリレオシリーズで、初の長編となります。

ただし、前2作と大きく異なるのは理系を駆使したトリックを
湯川が解明するというものではなく、湯川の大学時代の同期であり、友人でもある
天才数学者・石神との対決という構図になっています。

石神が住むアパートの隣人である花岡靖子が前の夫を殺害してしまい、
花岡靖子の苦境を察知した石神が事件の隠蔽に協力するという形で物語は進行していきます。

石神は花岡靖子を守るため、どのようなトリックを使ったのか?が本作の肝となる部分ですが
私も読みすすめながらある程度は自分でも考えを巡らせ、推理もしてみました。

しかし、真相を知ったときの衝撃はいまだに忘れられません。
湯川が花岡靖子に真相を告げるシーンはいつまでも頭から離れません。

今回、冷静でクールな湯川が苦悩するシーンが多いです。
湯川はある些細なことがきっかけで真相にたどり着くのですが、
それを明らかするべきかどうかで悩むんですね。

それは前2作とは違い、ただ単にトリックを解明し事件の真相を暴けばいいという訳ではなく、
友人・石神が花岡靖子を想う気持ちの大きさに気付くからです。

最終的に湯川がとった行動は、果たしてそれがよかったのかどうかはわかりません。
もちろん事件の全容解明のためにはそうするしかなかったのだろうと思います。

しかしそれで何が得られるのか?誰が幸せになるのか?
ということを考えると、答えは見つかりません。

読後感はとても悲しく切ないです。
読み終わった後しばらくは余韻が抜けませんでした。

緻密に考え抜かれた石神の驚愕のトリック。
そしてそれを見破った湯川の推理力、友人を思うが故の苦悩。
石神の花岡靖子に対する愛の深さ。

私の中では間違いなく東野圭吾作品の「最高傑作」と言える作品です。
未読の方は是非とも読んでいただきたいと思います。
超おすすめです。

おすすめ度:★★★★★★★★★★

 



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2011年2月14日 | コメント/トラックバック(13)|

カテゴリー:本の感想

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  1. boovie blog より:

    東野圭吾 「容疑者Xの献身」 驚天動地のトリック。

    もうこれは国語の教科書に載せていいんじゃないかっていうくらい。

    東野作品を全て読んだわけではない。
    「白夜行」「真夏の方程式」も素晴らしい。
    が、やっぱりナンバーワンはこ…

コメント

  1. 東上かおる より:

    こんにちは。かおるです。
    22日から夏休みです。
    その宿題の読書感想文は容疑者Xの献身で書くことに決めました。

    以前本は読んだことがあるのですがもう一度読み返しています。

    下書きしてから清書しようかなと思っています。

    • RYOJI より:

      かおるさん
      こんばんは。コメントありがとうございます。
      読書感想文ですかぁ。懐かしい響きです(笑)
      当時の僕は読書は大嫌いでしたので感想文なんかはもっとも苦手な宿題でしたね。
      あの頃に読書の素晴らしさに気が付いていれば楽しかったでしょうね~。
      かおるさんの書く「容疑者Xの献身」の感想文を是非読んでみたいです!
      極秘で送ってください(笑)

  2. キリン より:

    タイ人のキリンです。

    この小説を読む前に、1年前ぐらい映画化を見てしまいましたので、
    読むときは、こうになるでしょ?!って思い続きながら読みました。
    やっぱり、ある作品では小説を読んでから、映画を見る順番も必要なんですね。

    1年前ぐらい見たわけですので、あまり気持ちを覚えていないですが、感動したと思います。再見したいですね。どこで見られるだろう!?

    • RYOJI より:

      キリンさん
      コメントありがとうございます。
      本作は映画も素晴らしいですが、個人的にはやっぱり原作には劣ると思っています。
      僕はできることなら原作を読んでから映像を見るようにしてます。
      やっぱり原作ありき、かなと思いますので。
      DVDが出ていますが、入手は不可能でしょうか?

      • キリン より:

        やっと、『容疑者Xの献身』のDVDを手に入れることができました!!
        やっぱり、見ていたら、最後のシーンには涙が流れてとまらなかったんです。
        堤さんの演技が素晴らしかったですね。
        この小説はさずかに色んな賞を受賞した作品です。
        小説であろうと、映画であろうと、『感動』に違いないでしょう。
        東野圭吾さんのこれからの作品を楽しみにしてます^^

        • RYOJI より:

          キリンさん
          コメントありがとうございます。
          容疑者Xの献身のDVDは僕も何度も見ています。
          堤真一さんが素晴らしいですね。
          ラストは何度見ても涙が出ます。

  3. いっしー より:

    はじめましてこんばんわ。いっしーと申します。
    2人目のお子さんが生まれたそうで、おめでとうございます!

    さて、容疑者Xの献身ですが、私も上位に来るいや一番と言ってもいい作品と思います。
    湯川教授の前ガリレオシリーズより人間臭い感情が見られ、石神の数学を愛している感情から人を愛する感情への移り変わり、葛藤などで犯罪が起きていると思えない哲学的ないい作品でした。
    改めて東野圭吾氏の凄さを痛感しました。

    • RYOJI より:

      いっしーさん
      コメントありがとうございます。
      無事に2人目が産まれました。ありがとうございます。
      僕は本当にこの作品が好きで、一番最初に読んだにもかかわらず、一番好きな作品です。
      ガリレオシリーズは本作以降の作品は全部面白くて大好きです。
      湯川先生がどんどん魅力的になっていきます。

  4. ブリ より:

    映画もラスト泣いたけど原作の方がもっと泣けますよね。
    東野圭吾はガリレオ先生を佐野史郎さんのイメージで書いてたんだけど『容疑者~』以降は福山雅治になってましたねw。
    映画版『容疑者X』は石神が堤真一なのがアレ。だってイケメンは何やってもイケメンなんだものw。
    原作にはない登山シーンあったり花岡美里の「おかあさん、早く!」がなかったのが残念。

  5. のぶはる より:

    RYOJIさん。はじめまして。
    私も東野ファンで、ブログ拝見して大変嬉しかったです。

    「容疑者Xの献身」確かに感動する作品でしたよね。
    原作・映画共に何度も見てしまいました。
    映画内では、湯川と石神が留置所?で対峙するシーンの何とも切ない感じが絶妙でした。
    「君のその頭脳をこんなことに使うなんて、残念だ。」(少し違うかな?)
    「そんな事を言ってくれるのは湯川、お前だけだ。」
    2人な掛け合い、しびれました。

    その他、小説も大半読んでいますが、どうしても躊躇してしまうものもあるんですよね。ランキング見て、もっと読んでみたいと思いました。

    それではまた。


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